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2026.09.18

海を越えて祈りの場へ ― 子安観音像菩薩半跏像

今回のご依頼は、韓国の寺院から。

きっかけとなったのは、2016年に造顕した一躯の子安観音像でした。
その御顔、その佇まいに触れてくださり、近しい御姿の観音さまをお迎えしたいとのお話をいただく。

十年という時間を隔てて、もう一度この御姿と向き合うことになりました。

幼子はそっと母の胸に手を当て、
観音さまはその小さな手を、たなごころの中に包み込む。

見つめ合う二人の距離。
御顔のわずかな傾き。
幼子の身体を受けとめる腕のやわらかさ。

かつて彫った御像をそのまま写すのではなく、
十年前の造形をひとつの礎として、いまの眼と手でもう一度その関係を探っていく。

同じ御姿を彫ることは、同じものを繰り返すことではないのだと思います。

十年の間に見てきた御像、触れてきた古像、積み重ねてきた仕事。
そうしたものが知らず知らずのうちに手の中に残り、同じ形の中にも、以前とはまた少し違う呼吸が生まれてくる。

私にとって、海外の寺院へお納めする御像はこれが初めてとなります。

海を越えて御像をお迎えいただくということは、彫刻だけを考えていればよい仕事でもありませんでした。

御像本体、台座、光背。
それぞれをどのように守り、どのように運び、遠い土地で無事にひとつの御姿としてお迎えいただくか。

これまでとは異なる制約や条件と向き合いながら、造像の先にある「お届けするところ」までを思い描く。

そこには、いつもの仕事とはまた少し違う緊張がありました。

彫り上がったばかりのその日、妻・桂永子がカメラを向ける。

制作の途中からずっと傍らで見てきた人のレンズを通すと、自分で彫った御像でありながら、まだ気づいていなかった表情がふっと現れることがあります。

幼子を包む手のやわらかさ。
母と子の間に流れる静かな時間。
木からたった今立ち上がってきたような、かすかな気配。

その一瞬を、写真の中にそっと残してくれました。

「世のお母さんたちのための御像を」

十年前、この御姿を最初に顕したときに込めた想いは、今も変わりません。

海を越え、これから新しい祈りの場へ。

この御像が韓国の地で多くの方々に手を合わせていただき、
長い時間の中で、誰かの心にそっと寄り添う御姿となりますように。

子安観音像菩薩半跏像
檜材|総高約80cm
2026年|櫻井覺山・琮夕 謹刻
Photography by Keeko Sakurai

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